行政書士の仕事は会社の経営状況や従業員の情報を扱うことなどもあり、相手の会社さんから秘密保持契約(NDA)を結んでほしいと言われることがあります。僕は何でもかんでも個人情報としてしまう風潮なんかには辟易しているのですが、ある程度の規模の会社さんが自社の情報漏えいに対する防御策として秘密保持契約(NDA)の締結を求めることはいたしかたないのかなと思ったりしています。
ただ、担当者さんレベルだと、あまり秘密保持契約の内容を把握していない人もいるようで、会社から「これもらってきて」と言われて、テンプレそのままでお持ちになる人がいたりして、契約を締結するこちら側としては油断はなりません。
うちで取り扱った事例で修正をお願いしたものを紹介します。
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- 情報の正確性を保証しないのに、それを利用して依頼者に不利益があった場合、うちの責任になるというもの
仮に依頼者がでたらめな書類を用意して、それをもとにうちが許認可の申請をして許可が下りなかった場合、うちの責任になりかねません。情報の正確性を保証しない秘密保持契約は多いのですが、責任まで取れというのは、初めて目にしました。
- 承諾を得て、第三者に情報を再開示する際に、相手の誓約書を取れというもの
うちの仕事は役所に情報を再開示する必要があります。この条文が有効になってしまうと、役所から誓約書を取らないといけなくなりますが、役所はそんなものを書いてくれはしません。つまり申請ができなくなってしまうわけです。これだと、依頼者にとってもいいことはありません。
- 業務完了後は秘密情報に係る情報について複製など一切保持しないというもの
通常は申請書類等の副本はコピーを取らせてもらって事務所に保管しています。これがダメと言うのであれば、ダメでも構わないのですが、次の申請の際にまったく資料がない状態からスタートすることになるので、時間が掛かってしまいます。また、ちょっとした相談(例えば、「専任技術者変えたいんだけど」とか)にも応じられなくなる可能性があります。
こんな感じで、何かしら修正が必要だったりするので、しっかり拝見しなければいけないのですが、毎回毎回、字のちっさい秘密保持契約をチェックするのは大変です。そこで、行政書士法で定められている守秘義務で相手企業に納得してもらえないかと、行政書士法をあらためてみました。
第十二条 行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする。
第十九条の三 行政書士又は行政書士法人の使用人その他の従業者は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士又は行政書士法人の使用人その他の従業者でなくなつた後も、また同様とする。
第二十二条 第十二条又は第十九条の三の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
んー、シンプルですね。
罰則もあるし、基本はこれで十分なのだと思いますが、企業側からしてみればダメなんでしょうね。「それはそれで、念のため、うちの契約書にもサインしてもらえませんか?」とか言われそうです。